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一矢が先に入るのを玄関先で待ってから、四谷も足を踏み入れる。
とりあえず風呂にぶちこんで。何か温かいものでも用意しておいてやった方がいいのかもしれない。擦れ違いざまに触れた腕の冷たさに四谷はそう思う。
そして、一矢の背中を見遣り、靴を脱ごうとした、──その時。
「……うわっ」
一矢が不意に振り返った。腕が伸ばされる。力任せに、肉ごと掴まれる痛み。
バランスを崩された四谷は、一矢の腕のなかに引きずりこまれる。
「ちょっと一矢! 風呂が先だって!」
「……何、積極的じゃん」
「違うってそうじゃなくて! アンタ風邪ひくだろうが!」
「ひいてねえよ」
「後でひいたらどうすんだよ!……いち、……!」
うるさい黙れといわんばかりに、唇が押しあてられた。一矢の手が四谷の腰を掴み、玄関の壁に体ごと押し付ける。触れた裾に、そのまま手を滑りこませてこようとする動きに、四谷が身を捩らせた。
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