眠る午後

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*** 結局夢は訪れず、水に沈んでいたものが浮力に押し上げられるのに似たような力で、二葉はふと目を覚ました。 部屋の中はまだ明るくはあるものの、それは日が長くなっているせいだろう。その明るさはひそやかで、暗いと感じさせないだけのものだった。念のため時計を見ると、案の定夕方だ。よく眠ったと思いはしても、充足感というより一日がかりでどこかへ連れ去られていたような、腑に落ちない感覚がある。 とりあえずタバコに火をつける。起きてシャワーを浴びて、それから何か食事でもしに行こうか。無難な考えを巡らせながら、二葉は不意に耳に飛び込んできた音に耳を傾けた。--テレビだろうか。隣からか。それにしては、はっきりと聞こえる。
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