眠る午後

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即座にタバコを消し、足音をひそめて居間に向かい、ドアに手をかけて一気に引き開けながら「誰?」と声を出す。 「--ああ、起きたんだ二葉」 声の主は、いたってのどかに振り返った。 「……起きた、って……マジびっくりしたあ、強盗かと思った」 固く張りつめていた表情は遣り場を失って、戸惑いのうちに引き剥がす。それが不本意にも間の抜けたしろものになってしまうことは、どうしようもない。 「合鍵?」 傍らに座を占めて訊ねる。彼はてらいもなく「そう」と頷いた。
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