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ヨシオは水だった。
水槽の中で育てられた。水と言えども、ヨシオの場合、段々量が増えていく。人間の背が伸びるように。
だから姉の清華は、一年ごとに前より大きな水槽に取り替えてやっていた。
ヨシオは清華の家の、地下室に住んでいる。初めは家の中に水槽を置いていたが、お客や、清華の友達が、水しか入っていない水槽を見て、不思議がるので、地下室に移した。
ヨシオは、産まれる前までは心音なども確認されたが、出産の時、母からは水しか出てこなかった。
ヨシオの念力のようなもので動かされた医者は、ゴミ袋を持ってきて、ヨシオを注いだ。医者は「産まれましたよ」と言って、父にゴミ袋を渡し、父もヨシオに動かされ、父はゴミ袋からヨシオが漏れないように口をきつく縛り、車に乗せ、自宅に行き、飼っていた小さい金魚を水槽から庭の溜池に移し、ヨシオを水槽の中に入れた。
母が退院し、家に戻ってきて、まだ小さい清華が水槽に手を入れて、「お母さん、赤ちゃんどこ?」と聞かれたとき、母は泣いた。
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