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ヨシオは水だが、生きているというのは、両親は分かっていた。それはヨシオの念力のせいもあるし、離乳食を水槽に入れてみると、必ず消えるからだ。 どのようにして食べているかは両親も清華も見たことがない。ヨシオは食事中の姿を誰にも見せなかった。 父はヨシオのことを良く思っていないのか、滅多にヨシオのことを話題に出さなかった。母も毎日決まった時間に三度の食事を水槽の蓋を開けて落とすくらいしかしなかった。 しかし清華はヨシオの面倒を良く見た。自分のおやつをヨシオに分け与えていたりした。 清華が六歳のとき、母が清華の為に用意したケーキを、清華は冷蔵庫から取り出して食べていると、ふとヨシオのことが頭によぎり、清華は「ヨシオにもあげよう」と思った。玄関にある、靴の棚に置いてある水槽に、ケーキを半分に切って蓋を開けて落とした。 「美味しい?」 清華は長いこと、ケーキが消えるのを待ったが、トイレに行きたくなり、一旦トイレに行って、玄関に戻って水槽を確認してみるとケーキが跡形もなく消えていたので、清華は軽く悲鳴をあげて、後ずさりした。
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