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ヨシオが地下室に移されてからも、清華はヨシオの面倒を見た。 中学生になった清華は、勉強に励むようになった。 テストが近くなると、清華は地下室に行き、ヨシオの水槽が置いてある、机で勉強をした。 ヨシオの前だと清華は不思議に落ち着き、集中が続いた。 清華は、休憩の為に容れたコーヒーをを少し水槽に注いだ。 「ヨシオは勉強なんかしなくていいもんね」 そう言って清華は微笑む。 冗談のつもりだったが少し可哀想だったかなと思い、「ごめん、ごめん」と言い、机のノートに目を落とす。 しばらくノートに目をやったまま勉強をしていたが、ふとヨシオの方を見ると、目を疑った。 水槽にはコーヒーの茶色い液体が「GANNBATTE」という文字を作っていた。 「ヨシオ、あんた言葉が分かるの!?」 ヨシオは毎晩、目の前で勉強をする清華を見て、文字を学んだのだ。 何故ローマ字なのかは分からないが、もしかすると、自分が普通の人間ではない、というヨシオの自虐なのかもしれない。
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