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清華は高校生になってロングヘアになり、学習塾に通いだし、夜もそこで勉強をするので、ヨシオと話す時間は前よりかなり減った。
清華はそのことを気にしていたが、塾をさぼるわけには行かなかった。
だから、清華は、塾が休みの日は地下室で勉強した。
清華が椅子に座ると、水槽のブロックがゆっくりと動き出す。
「姉さん、最近は、あまりここに来ないんだね」
「塾があってね。忙しいのよ」
「そうなんだ……」
清華はノートから目を離し顔を上げた。
「ヨシオ……あんたまた少し増えたんじゃない? そろそろ水槽を取り替えなきゃ」
「そうしてくれるとありがたいよ」
その年の冬、ヨシオの水槽の取り替えが行われた。
水槽はとても大きくなり、机にぎりぎり乗るくらいだった。
「ヨシオ、あたし思うんだけど、あんたって成長が止まらないんじゃないの?」
「そうかもしれない」
「だからあんたはいずれ水族館の巨大な水槽に移るかもね。最終的には海かな」
「僕はここが良いよ」
緑のY、青のO。
「じゃないと姉さんに会うのが難しくなる」
清華は心臓が少し跳ねた気がした。
声が出らず、しばらく水の弟を見つめたままだった。
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