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(何で知ってるんだ?!)
どきまぎするあたしを置いて得意気にカレが続けた。
『他にも仕事が大変な日にはパンを食べることも、寝不足の日にはブレンドを飲むこと、それから疲れた日にはココアかラテ。最近また疲れてますね』
とにっこり笑った。
『えっとキミは…』とかなり怪訝な顔をしてしまった。
『すいません、ストーカーとかじゃありませんよ。ただのいちファンです』
『ファン?』
『そう。だから完璧なあなたが財布を忘れるという現場に立ち合えて凄くうれしかったんです』
すっかり忘れていたお金をだそうとすると、
『おごりって言ったでしょ』
『でも…』
『じゃあ、お礼にデートしてください!』
『え~』大きな声が店に広がり、ほかのお客さんがこちらを一斉に見つめた。あまり恥ずかしく下をむいていると、人差し指であごを持ち上げられた。
『決まり。土曜6時駅前で。』
ぼーっと見つめたままいるとカレの顔が近づき、耳元に唇がやってきた。
『このまま見つめていてほしいけど、遅刻しちゃうよ』
我にかえり、ケータイを見るといつも店を出る時間を過ぎていた。慌てて席を立ち、カレになにを言ってよいかわからず無言で店をあとにした。
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