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目の前の水晶に淡く浮かび上がるように映し出される映像に、思わず真っ白な前髪を掻き上げながらため息をついた僕ー深淵の魔法使いことロゼーはベッドに背中から倒れこんだ
「なんで僕のとこにくるかな……」
瞑る瞳はそのままに賢者とも呼ばれる僕は様々な考えを頭に巡らせては打ち消すことを繰り返す
なぜこんなに僕が悩んでいるのか、それは数時間前に遡る
*
「……へ?嘘でしょ?」
人の暗い面ばかりみてきたために、嫌気がさした僕は日の光すら入らない鬱蒼と茂る森に住んでいる
危険度の高い魔物ばかりがうろつくこの森にあるために、侵入を防ぐために張った結界が歪んでいるのだった
ポツリこぼれた驚きの言葉は、魔物達は結界を見た時点で実力差を理解するために、歪んだことがなかったためで、それゆえにここに訪れたのが魔物以外であることを示す
仕方なく色とりどりの表紙が目立つ本が散乱している机から水晶玉を引っ張りだして冒頭にいたるのだった
水晶玉に映るのは男の子さまさまといってもいいくらいのおてんばそうな淡いピンク色の髪と瞳を活発に輝かせる女の子と、まるで闇のような真っ黒な長い髪をうなじでひとつに束ね、青い鋭い瞳を結界に向けた王国御用達の騎士団の団服姿の青年、金糸のような髪を肩口で切りそろえた優しげな雰囲気をもつ青年だった
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