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水晶玉を通して見える彼らの姿から入らないからと諦める様子は全く見られず、またため息がこぼれた
「仕方ないな、全く」
突如身体からふわりと風が舞い上がり僕の真っ白な髪を揺らす
使ったのは水晶玉を媒介とする通信魔法で、僕の声をあちらに届けることができるのだ
『君たち、ここでなにをしているの。さっさと消えてくれないかな』
いきなり響いた声に驚いたのか臨戦体制にはいる彼らに思わず苦笑いを浮かべるが、構わず先を続けた
『ここまで来たってことは、僕が人嫌いなのも知った上でここにいるんでしょ?』
「ええ、私たちは貴方に頼みがあってきたの。もちろん、それ相応のお礼はするわ」
女の子が凛と背を伸ばして言った言葉にイラっときた
賢者たる僕に相応のお礼をすると言った彼女に若干低くなった声で返す
『へえ……、この賢者たる僕の知らないものなんだろうね?』
「私が城から持ってきた真紅のルビーでどうかしら?」
『断る、そんなものいらないよ』
冷たく言い放った言葉にたじろぐ彼女の後ろにいた金髪の青年に何気なく目が向いた
異なるものを映し出すこの目に映ったのは背中から立ち上る紫色の魔力
見るだけでかなり強い呪縛だと理解できる
そんな彼に少し興味が湧いてしまったのが、僕のミスだったのかもしれない
『気が変わった、そこの金髪の子とちょっと話させてくれるなら、ある程度のことなら聞いてあげる』
「私ですか?それだけで宜しいのなら構いませんが」
『んじゃ、成立だね?頼みはなんなの』
あっさり肯定した彼に少々びっくりする
「刻死病の薬を村一つ分、分けてもらいたいの」
『それなら中にあるかな、入ってくるといい』
真剣な瞳でそう言った彼女らを、結界を一部開いて招きいれてやる
あとは来るのを待つだけだ
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