二十三話

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切な気であまりに自分の髪を大切そうに触れる水仙に太陽は何も言えなくなった。 誰も居ない公園で男二人向き合っているなんて何とも奇妙な光景なのは解っていた、それでも。 「あれ、水仙?」 そんな妙な錯覚の時間を打ち壊す声がどこからか聞こえる。 木の影から長い藍色に輝く髪がチラついた。 「おじさん!?」 勢いよく太陽から離れ、その藍色の髪の方へ歩み寄ると、その髪の持ち主の全貌があわらになった。 「よかった、やっぱり水仙だ。 間違ったらどうしようと思ったばい」 なまり混じりの口調からは考えずらい容姿端麗な男性。 長い前髪を左にまとめ、細い藍色の髪は後ろで縛られ背中の中心付近でいやらしげに揺れている。 細身でただYシャツにカーディガンを羽織った程度なのにやたら格好がよくみえる。 水仙とよく似た涼しげな青い瞳。
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