二十三話

13/14
前へ
/300ページ
次へ
――いいじゃない。  何が不満なの……? 優しそうで、 お金持ちで、 身長も高くて、 顔もよくて、 頭がボーとして何も考えられない。 ただ、猫乃間の顔をずっとみていた。 「たんぽぽ!」 艶のある懐かしい声。 その声でようやく正気を取り戻す。 「おじさん……それに水仙」 天葉家がほぼ全員 集まった。 しかし、水仙達よりも先に向かったはずの太陽がいない。 「姉貴、たい…………」 太陽来なかった――と聞く前に土筆の長い指が水仙の口をふさぐ。 「え、何か言った水仙」 「気のせいだよ。 それより……猫乃間の跡取り様にいつまで立たせるつもりだい?」 涼しげな笑みを浮かべながら、猫乃間の方を見る。 「い、いえ……僕は」 「いいから上がっていきなさい」 玄関のドアを開け、蒲公英もろとも家の中へ押し込むと、ようやく水仙の口から手を離した。
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加