二十四話

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「ありがとうございます」 「い、いえ……それより僕に構わず電話に……」 照れたように笑う猫乃間がさっきから太陽と重なって酷く辛い。 ――本当はこれからずっと一緒のはずだったのに。 もう、やめたい。 こんな彼のことがちらついているのに……他の人なんて。 「あの、猫乃間さん……婚約のお話し何ですが」 そう言いかけたとたん祖父の言葉が頭に浮かんだ。 『大学をやめて働け。 うちには、お前らを支援する金はもうない』 そんな事になれば私だけじゃなくて水仙も。 「すいません……何でもありません。テレビ、勝手に見てて下さい。 ちょっと失礼します……」 軽く会釈をしリビングを出ると、猫乃間がつけたテレビの天気予報がしきり越しに聴こえる。
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