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高校二年、太陽が蒲公英と正式に付き合い始め一年になろうとしていた。
「へー……うちの高校にも七不思議とかあったんだ」
水仙から七不思議を聞くと何とも興味なさ気に当たり前の返事をする太陽。
「王子リアクション薄くてつまんねー」
「だって興味ないもん。
恋のジンクスとかなら聞くよ」
最近の太陽は更にダンディライオンシンドローム。直訳で蒲公英病は悪化していた。
交際を始め、毎日 蒲公英に会える幸せを十二分に堪能する彼が水仙としては太陽が全く構ってくれないため面白くない。
「何だよ……いつも姉貴、姉貴って…………文化祭だぜ、七不思議の六番目、当日行ってみようとか思わねーわけ?」
「水仙って意外と夢見がちなところあるよね」
「ガキで悪かったな」
真顔で夢見がちとか言う彼のぷよっとつき出たお腹を引きちぎる勢いで水仙はつまんだ。
「い、いだいぃっっ……水仙、ごめんって許してっ」
「摘まみたくなるような腹してんのがわるいんだろ」
去年は蒲公英の失態にて太陽と文化祭が過ごせなかった。
だから水仙は、どことなく浮き足だっていたのだろう。
しかし、悟った。
「…………あ。どっちにしろ姉貴と回るから俺に構う暇ないのか……」
自分から手を離し、Sっ気のある顔から急に泣き出しそうな子供っぽい顔をする。
その顔が太陽の良心を針でつつくように苦しめた。
確かに今まで色々あってほとんどが水仙のサポートで乗り越えられてきた。
親友としてこんな顔をさせてどうする。
「俺も太陽と回りたかった」
「うぅ……っ」
「太陽」
ジッと蒲公英と同じ青い透き通った瞳が自分を見ている。
どうしてもこの目にはかなわない。
「そんな目するなよ……いいよ少しだけだけど一緒に回るよ」
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