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午後。
蒲公英との交渉もそこそこに、接客へと回された太陽だったが、意外にも売り上げは上々だった。
「王子しっかりしろよ……姉貴が居ないからってやる気無くしすぎ」
教室の前で太陽が落胆していると教室から聞き慣れた嫌味ったらしい声がした。
顔を声のする方に向けると、接客が終わったばかりなのか少々派手な服装の水仙がいた。
「水仙……今終わり? お疲れさま」
「何か癒されねー……そんなしょぼくれる必要ないだろ」
そんな、落ち込みたくもなる。かなり前からこの文化祭を楽しみに待っていたのに。
主にデートを。
まさか、こんな砕かれ方をされるなんて……。
しかも、蒲公英がホステスとしてさっきまで自分もいた世界に……男としても、嫌なものがあった。
デリケートな彼女が耐えられるのか。
そして、何より他の男に言い寄られる蒲公英を想像しただけで泣きたくなる。
「たんぽぽちゃぁん……やだな他の男に触られてたらどうしよう…………」
「…………っ」
――他の……太陽以外の男が姉貴に触れる?
水仙の頭がその次に導き出す答え。
「太陽こい、姉貴ん所行くぞ」
頭で考えるより先に太陽の手を掴み、さっき出てきた教室へまた戻っていった。
太陽は何がなんだか訳がわからず、ただ水仙の言う通り身をゆだねる。
「あれ、水仙に王子どうしたの? 午後は休憩のはずだろ」
受け付け役の男が不思議そうに聞いてきた。
「姉貴……天葉 蒲公英を頼む全時間分」
バンと大きく、受け付け台を叩くとその手にはお札が握られていた。
「ぜ、全時間……!
そんなの無理に決まってるだろたんぽぽは午後の稼ぎ頭何だからな
もうすでに何人か予約が入ってるんだから……」
「そ、そんなぁ…………」
泣き出しそうな太陽を横目に水仙は金を更に受け付け男子に押し付ける。
「おい、水仙……確かに王子が可哀想なのはわかるが……」
「そんなんじゃねーよ馬鹿。
ただ単に姉貴を他の奴に触らせたくねーだけだ。
もう一度言う。天葉 蒲公英を全時間分……これは、指名じゃない。命令だ。
わかったな…………」
皇帝とも言える様な迫力と気迫受け付けの男は黙って蒲公英の部屋をさした。
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