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『…いやっ…痛ッ……やめ…ン』
それは明らかに嫌がる男の喘ぎ声
今までこんなことはなかった
壁越しから聞こえてくるのは、いつも卑猥で甘い喘ぎ声で、嫌がる声なんてなかった
『…少し大人しくしてろって…ほらっ!』
『いやっ……いやぁあああ!!』
バンッ!!!!
気が付けば俺は、兄貴の部屋の扉を叩きつけるように開け放っていた
「兄貴、なにしてんの?」
その時の俺の声は酷く低かったのを覚えている
「…!…助け…て」
メイド服の男は少し驚いた顔をした
が、すぐに俺に助けを求めた
俺は、たじろいていた兄貴を押し倒してソイツを逃がした
「ま、まて!」
兄貴の焦っている声を無視して俺とソイツは家を飛び出した
「はぁっはあっ…」
気が付けば俺はいつまでもソイツの手を握って走っていた
彼の吐息は俺以上に荒い
「あっ…ごめん…」
俺は近くの路地裏でソイツの息が整うのを待った
やがて言葉が発せれるくらいまでソイツの背中を擦っていたら、ふいに呼び掛けられた
「……はっ…はぁ…あの…ありがとう…」
「ん…いや、気にすんな」
暗がりで男の顔はよく見えない
多分、笑っていたんだと思う
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