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「おまえの身体、まだ九条の坊ちゃんで満足してるのか?」
驚愕に目を見開く僕を見下すように、征司はいやらしく僕の尾てい骨に手を這わせる。
「……どうやってここに?」
後ろ手に腕をとられ、僕はそのまま革張りのソファーに投げ捨てられた。
「バカな弟だ。俺が入り込めない場所があると思うか?」
傲慢な声。
反発したくなる
不敵な笑み。
「ないでしょうね。僕の中以外は――」
身を翻し微笑む僕の頭上から、飲みかけのシャンパンが浴びせられた。
「もっといいシャンパンを置けと彼氏に言っとけ――」
僕は前髪から滴るシャンパンの雫を指先で払うと、溜息をついた。
「征司お兄様、僕が欲しくて追ってきたの?」
「自惚れるな。青臭い愛に目覚めたおまえになんて興味はない」
征司は僕の唇すれすれに、牙を剥いて囁く。
「俺が欲しいのは――薔薇色に頬を染めたおまえなんかじゃない。青白い顔して堕ちていくおまえだけだ」
「相変わらずですね」
沈黙。
僕の目を覗き込む
僕のすべてを知り尽くした獰猛な双瞳――。
イギリスから戻った征司は以前にも増して自信に溢れ、胸が高鳴るほどパーフェクトな男になっていた。
「なあに、おまえはすぐ戻ってくるさ。俺の世界にな」
僕の頬を優しく叩くと、征司は核心に迫る――。
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