episode 17 魔王の罠

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「僕を抹殺すると脅された?」 耳元をくすぐる心地のいい声音で、九条さんは囁く。 僕はただ無言で頷いた。 「遅かれ早かれ、彼から君を奪った時点でこうなる事は予想していたよ」 だから――九条さんは自嘲気に笑って続ける。 「そのせいで君が自分からいなくなるんじゃないかって――必要以上に恐れてた」 すべて想定していて それでも――僕を手元に置いた。 「僕なんか手放したらいいのに……そうまでして囲っておく価値なんてないよ!」 なんだか 無性に腹が立った。 はねつける僕の手をさらりとかわすと、九条さんは逆に僕をベッドに押し倒した。 「君には自分の価値が分かっていないの?」 「分かってるさ。男を虜にする魔性の身体、悪巧みばかりする腐った脳味噌――それから」 「それから?」 「からかってるの?こんな時に――」 「からかう――?ふざけるな!」 暴れる僕の両手を軽々押さえ込み、九条さんは声を荒げた。 「そんなもののために――僕がすべてを投げ出すと思ってるのか!」 彼の人生を翻弄したのは、きっと間違いだった。 「僕がすべてを賭けて愛するものを――今後一切侮辱するな!」 涙が流れるほどの 誤算だった――。 「抱いて……朝まで抱いてください」 だけど愛は形を変える。 朝が来たらきっと 僕らの蜜月は終わりを告げる――。
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