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「僕を抹殺すると脅された?」
耳元をくすぐる心地のいい声音で、九条さんは囁く。
僕はただ無言で頷いた。
「遅かれ早かれ、彼から君を奪った時点でこうなる事は予想していたよ」
だから――九条さんは自嘲気に笑って続ける。
「そのせいで君が自分からいなくなるんじゃないかって――必要以上に恐れてた」
すべて想定していて
それでも――僕を手元に置いた。
「僕なんか手放したらいいのに……そうまでして囲っておく価値なんてないよ!」
なんだか
無性に腹が立った。
はねつける僕の手をさらりとかわすと、九条さんは逆に僕をベッドに押し倒した。
「君には自分の価値が分かっていないの?」
「分かってるさ。男を虜にする魔性の身体、悪巧みばかりする腐った脳味噌――それから」
「それから?」
「からかってるの?こんな時に――」
「からかう――?ふざけるな!」
暴れる僕の両手を軽々押さえ込み、九条さんは声を荒げた。
「そんなもののために――僕がすべてを投げ出すと思ってるのか!」
彼の人生を翻弄したのは、きっと間違いだった。
「僕がすべてを賭けて愛するものを――今後一切侮辱するな!」
涙が流れるほどの
誤算だった――。
「抱いて……朝まで抱いてください」
だけど愛は形を変える。
朝が来たらきっと
僕らの蜜月は終わりを告げる――。
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