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翌日――。
「しまった――!」
昼過ぎまで泥のように眠っていた。
こんな時に緊張感がなさ過ぎる――思ったけれど。
「あ……」
本来眠りの浅い僕が、彼が部屋を出て行くまで眠り込んでいるなんてありえない。
「やられた」
朝方、九条さんがグラスにアイスティーを入れて僕に飲ませてくれたことを思い出す。
余計な心配かけずに眠らせようと――彼が睡眠薬でも盛ったんだ。
少しぼんやりする頭で起き上がり、シャツを羽織ってベッドを出る。
ご丁寧に僕の好物ばかり並んだルームサービスまで届いていた。
いつもどおり白いカードにはメッセージ。
『Mon petit oiseau』
僕の小鳥――。
「こんな時まで――」
少し呆れてライムジュースを手を伸ばすと、テレビをつけた。
新聞とニュースショウに一通り目を通す。
これと言って、大きな動きがあるわけではなさそうだ。
だけど朝起きて、すでに彼が僕の隣にいないという事。
それはすなわち、水面下で何か良くない事が起こっている証拠だ。
突然――。
耳慣れない音で、ホテルの内線電話が鳴り響いた。
今まで一度もなかった事だ。
九条さんかもしれない。
僕は無言のまま受話器を上げた。
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