episode 17 魔王の罠

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雑音交じりの不穏な空気の中――。 「坊ちゃま」 くぐもった中川の声がした。 「中川か――どうなってる?」 声を潜めるようにして、僕は聞き返す。 「私が直にこうして連絡差し上げられるのはこれが最後かと――」 「何?」 思ってもみない言葉が返ってくる。 「見張られているのです」 ピンときた。 「征司お兄様だね?」 征司は中川が僕に通じていることを知っている。 真っ先に、動きを封じようとしてるのだろう。 「――はい」 「それでお兄様、何を企んでる?」 声が途切れ、より一層低く中川が答える。 「長電話は危険です。坊ちゃま――薫様をお見舞い下さいますよう」 「薫お兄様を?」 「薫様にすべてをご伝言致します」 受話器越しに僕は肩をすくめた。 薫は信用できるような男じゃない。 だけど今はそれしか――方法はないようだった。 「分かったよ――」 それに僕 薫の弱みなら ひとつ握っているしね――。
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