episode 17 魔王の罠

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薫は子供みたいにきょとんとして首を傾げた。 「あ、もしかしたら覚えてないんだ?それじゃ罪に問われても心神喪失かもしれないね」 「罪?」 眉間に深くシワを寄せると――薫は押し黙った。 「わあ、思い当たる節があるみたいだ」 僕はそっと薫の耳元に唇を寄せ、内緒話で囁いてやる。 「お父様に僕の薬飲ませたの、薫お兄様でしょう――?」 薫の横顔。 耳たぶまで真っ赤に、紅潮する。 「薫お兄様、あの夜自分で言ったんだよ――?ほら、征司お兄様がお父様の心臓が止まったって帰ってきた時さ。神様がやっと僕の願いを聞き入れたって」 生血を捧げてまで 叶えたかった願い。 「ねえ、お父様をそんなに憎んでるの?――殺したいぐらいに?」 薫は静かに目を閉じる。 やがて殺意を含んだ冷たい視線を僕に向けると 「おまえの欲しい情報は与えてやるから――とっとと帰んな」 言った。 あとは――暗黙の了解だった。 「いいね。お互いの為にもそれが一番」 薫の積年の恨みにもう一歩踏み込んでみたいけど――今はそんな余裕はない。 「征司兄さん――九条グループをホテル事業から撤退させるつもりだぞ?」 「それって――」 「当然、九条敬は代表取締役を解任されるだろうな――叩いて埃が出れば社交界からも追放される」 「九条さんは悪いことなんか何もしないよ」 それでも――薫は首を横に振る。 「重箱の隅をつつけば、いくらでも寝首をかく材料なんて転がってるもんさ――それにそいうの、征司兄さんの得意分野だろ?」
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