episode 17 魔王の罠

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溜息しか出ない。 「だけどそもそもだよ、征司お兄様に九条グループのホテルを買収するだけの権力があると思う?」 僕は頭痛がしそうなこめかみに両手を当てた。 「すべての決定権は筆頭株主であるお父様にあるでしょう?お父様は昔から懇意にしてる九条家に突然そんな仕打ちはしない――例え征司お兄様がなんて言ってもね」 薫は僕を小馬鹿にしたように鼻で笑って、ベッドから立ち上がった。 「だからおまえはあいつにとって食われるんだ」 明らかな違反行動――窓際でタバコに火をつける。 「狡猾な征司兄さんが、個人的な復讐で親父に頼み事なんてするもんか――」 おいしそうに煙を吐き出しながら、薫は笑った。 「じゃあ、どうやって?」 「――勝算があるんだよ」 「勝算?」 タバコが1本灰になる頃、ようやく薫が種明かしを始める。 「九条家が代々経営してきたインペリアルホテル――あそこが九条グループのホテル経営の要だ。分かるな?」 歴史と伝統に彩られた日本屈指のクラッシックホテルは、九条さんの曾お爺様の代から受け継がれたものだ。 「あそこのホテルの権利だけは、親父の手を離れてる」 「じゃあ、どこに?」 「考えてみろ――九条敬がそもそも何者だったのか」 「まさか――」 現在進行中のゲームなのに この瞬間 僕に勝ち目はなくなった――。 「インペリアルの個人筆頭株主は元婚約者の貴恵姉さんだ――」 征司は貴恵と共謀する気だ。
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