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溜息しか出ない。
「だけどそもそもだよ、征司お兄様に九条グループのホテルを買収するだけの権力があると思う?」
僕は頭痛がしそうなこめかみに両手を当てた。
「すべての決定権は筆頭株主であるお父様にあるでしょう?お父様は昔から懇意にしてる九条家に突然そんな仕打ちはしない――例え征司お兄様がなんて言ってもね」
薫は僕を小馬鹿にしたように鼻で笑って、ベッドから立ち上がった。
「だからおまえはあいつにとって食われるんだ」
明らかな違反行動――窓際でタバコに火をつける。
「狡猾な征司兄さんが、個人的な復讐で親父に頼み事なんてするもんか――」
おいしそうに煙を吐き出しながら、薫は笑った。
「じゃあ、どうやって?」
「――勝算があるんだよ」
「勝算?」
タバコが1本灰になる頃、ようやく薫が種明かしを始める。
「九条家が代々経営してきたインペリアルホテル――あそこが九条グループのホテル経営の要だ。分かるな?」
歴史と伝統に彩られた日本屈指のクラッシックホテルは、九条さんの曾お爺様の代から受け継がれたものだ。
「あそこのホテルの権利だけは、親父の手を離れてる」
「じゃあ、どこに?」
「考えてみろ――九条敬がそもそも何者だったのか」
「まさか――」
現在進行中のゲームなのに
この瞬間
僕に勝ち目はなくなった――。
「インペリアルの個人筆頭株主は元婚約者の貴恵姉さんだ――」
征司は貴恵と共謀する気だ。
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