episode 17 魔王の罠

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「幸運を――」 2本目の煙草に火をつけた薫は、部屋を出る僕に向かって囁いた。 僕に黒薔薇を投げ、永遠の憎しみを誓って去ったローズ・クィーン。 あの魔女の呪いが、こんな形で成就するなんて――。 いまや 九条さんの首を握っているのは 他の誰でもない 貴恵お姉様だ――。 「おっと……」 西日の差す廊下の先で、誰かにぶつかる。 「――すみません」 頭を下げる僕の目に、可憐なマーガレットの花束と――不釣合いなほど輝くロレックスが飛び込んでくる。 「考え事か――?」 顔を上げて一瞬、くらりと眩暈がする。 長いトレンチコートを王のマントのように翻し、征司が僕を見下ろしていた。 「征司お兄様――」 征司が何の理由もなく、こんな場所まで薫を見舞いに来るなんてとても思えない。 「電話まで盗聴するなんてやりすぎですよ」 鎌をかける僕を真正面から見つめて、征司は無言で微笑んだ。 「計画は順調みたいですね――」 憎たらしいほど自信に満ちたそのまなざしに、僕は噛みつく。 「なあ、和樹。あいつを助けたいか?」 最後通告を無視した僕を 罰するように露骨に――。 「なんなら今ここで、跪いて俺に許しを請うか?」 征司は僕を虐げる――。
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