episode 17 魔王の罠

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僕は征司の足元に膝をついた。 見栄もプライドも 身を救いはしないと知っているからだ。 「僕があなたに跪いて事が収まるなら、何度でも頭を下げます」 僕は征司の足元に両手をついて、微動だにしない王の瞳を見上げた。 僕がこんなマネして九条さんを庇うことで 一番傷つくのは自分だって 分かってるくせに――。 「おやおや、そうもいかないみたいだぞ?」 征司の眉がぴくりとはね上がった。 兄の前に跪く僕の背後から――コツコツと。 勇み足でこちらに向かってくる足音が聞こえてきた。 振り返るより早く、僕の身体が引き起こされる。 「好きになれないな」 「九条さん……?」 シルクのビジネススーツに身を包んだ九条さんが、凛として征司に対峙していた。 「そういう前時代的なやり方は――いささか高潔さに欠ける」 よく通る低い声が場を圧した。 「――騎士道ですか」 征司が仰々しく頭を下げた。 「なるほど。弟があなたに惚れたのも分かる気がします。どんな時も高貴で誇りを失わない。たとえ地獄に片足突っ込んでいる時でさえ」 口角上げて抜け目なく笑う腹黒い策士に――。 「愛のせいですよ。一番必要とする人に愛されているから――僕は揺るがない」 ロマンティストはもっとも痛烈な一撃を食らわせる。 危ないね 目に見えない火花で 僕は火傷しそうだった――。
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