episode 18 クイーンの憂鬱 ①

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そうして僕らが 「和樹、ファの音で鳴いたね」 「やめてよ、絶対音感でもあるの?」 鍵盤の上で猥雑な音色を奏でている間にも――。 着々と魔王の触手は動いていた。 翌朝早く、九条さんはお父上である九条グループの会長に呼び出され部屋を出て行った。 インペリアルホテルでは、同業者による主要役員のヘットハンティングがはじまり、従業員の間に動揺が広がっていた。 歴史ある名門ホテルが 禁じられた愛のために 青白い顔した天宮家の妾の子のために 犠牲になろうとしていた。 「もしインペリアルが征司くんの手に渡ったら――全従業員は解雇され伝統は僕の代で途絶える」 夜遅く戻ってきた九条さんは、ここ数日で頬がこけるほどにやつれていた。 「君はどうなるの?」 「僕はいいんだ。どうなったって食べてはいける」 責任感と良心にさいなまれながらも――。 「だけど従業員を守ることができないとなると――父は僕を許さないだろうね」 九条さんは 愛をあきらめるとは言わない――。 「――やっぱり僕」 手にしたところで 誰にも認められやしない愛を。 「約束したよね?僕の許可なくどこにもいかないって」 時は僕らの戸惑いなんて我関せずに進んでゆく――。 そうして いよいよ運命の鍵を握る 女王の帰還が迫ってきていた――。
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