episode 19 クイーンの憂鬱②

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「まったく。男っていちいち女々しくて面倒ね――」 溜息混じりに笑うと、貴恵はフランス人形のような顔で僕を見つめた。 「昨日の今日で、ずいぶん早かったわね――」 「いつ試しても一緒ですから」 「それにしても彼、案外簡単にあなたを手放したものね」 「さあ――。どうでしょう?」 「まだ追ってくると思ってるの?」 「分かりません。かなり手酷く別れたので」 「いいのよ、それで。そうしないと意味なんてないもの」 女王はもったいつけて言った。 「いいわ――。彼の本心を私が確かめてあげる」 最初からそのつもりだったくせに――。 「じゃあ、この問題にも片をつけてくださる?」 「ええ。征司はむくれるでしょうけど、私ははじめから九条さんに株式譲渡するつもりで戻ったのよ――。九条グループのホテルになんて、はなから興味はないしね」 こんなに楽しいゲームの最中に浮かない顔。 女王様はまさしく憂鬱。 もしかしたら――。 「ねえ、お姉様はまだ九条さんを愛してらっしゃるの――?」 僕は貴恵だけに聞こえるように、そっと囁いてやる。 「野暮なこと聞かないでちょうだい――」 顔色一つ変えず、貴恵はアールグレイを啜った。 答えは2択だ。 女王は己の弟を愛してしまった貴公子を。 A.愛している。 B.憎んでいる。 さあ、どっち――?
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