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「まったく。男っていちいち女々しくて面倒ね――」
溜息混じりに笑うと、貴恵はフランス人形のような顔で僕を見つめた。
「昨日の今日で、ずいぶん早かったわね――」
「いつ試しても一緒ですから」
「それにしても彼、案外簡単にあなたを手放したものね」
「さあ――。どうでしょう?」
「まだ追ってくると思ってるの?」
「分かりません。かなり手酷く別れたので」
「いいのよ、それで。そうしないと意味なんてないもの」
女王はもったいつけて言った。
「いいわ――。彼の本心を私が確かめてあげる」
最初からそのつもりだったくせに――。
「じゃあ、この問題にも片をつけてくださる?」
「ええ。征司はむくれるでしょうけど、私ははじめから九条さんに株式譲渡するつもりで戻ったのよ――。九条グループのホテルになんて、はなから興味はないしね」
こんなに楽しいゲームの最中に浮かない顔。
女王様はまさしく憂鬱。
もしかしたら――。
「ねえ、お姉様はまだ九条さんを愛してらっしゃるの――?」
僕は貴恵だけに聞こえるように、そっと囁いてやる。
「野暮なこと聞かないでちょうだい――」
顔色一つ変えず、貴恵はアールグレイを啜った。
答えは2択だ。
女王は己の弟を愛してしまった貴公子を。
A.愛している。
B.憎んでいる。
さあ、どっち――?
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