episode 20 偏執する愛

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久しぶりの征司との情事の後――。 薬草が焼けるような、嗅いだ事のない匂いがして。 僕は我に返った。 「それは……?」 煙草を吸わないはずの征司が、窓際で煙をくゆらしていた。 「吸うか?」 「もしかして……」 「バカ、合法ドラッグだ」 征司は半裸のまま背を仰け反らせ、深く息を吐き出す。 僕は重い身体を引きずるようにして征司の隣に並んだ。 「この間、薫を見舞いに行った時にあいつが」 「へえ……」 手渡されたそれを僕は深く吸い込んだ。 「けっこういいぞ。嫌な事は全部忘れられる」 瞬間、頭がくらくらして空間が歪んだ。 「あはは、本当だ――」 僕は急に満たされた気分になって、征司の肩にもたれかかった。 「だろ?」 征司のとろんとした目がたまらく可愛く見えて、僕は強引にキスする。 「とろけそう」 目から火花が散るようなキスだった。 「だけど、どうして薫お兄様こんなもの――」 「あいつがハイになってるとこなんて、想像できるか?」 征司は豪快に笑って、窓から身を乗り出す。 「危ないよ!危ないってば……」 ご機嫌な王様は 自分の身に危険が迫っていることなど もちろんまだ知る由もなかった――。
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