episode 20 偏執する愛

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「どうして……」 「どうして?それはこっちのセリフだよ」 九条さんはクロスをちぎれんばかりに握って言った。 「どうして僕の愛を試したりしたの?」 僕にはまだ 彼が分かっていなかったみたいだ。 彼が一途な愛に対して どれだけ真摯で 完璧主義かということを――。 「君に試されて、僕はすべてを手に入れなくちゃいけないと思った」 闇の中でも、こぼれそうなほどに輝く美しい瞳。 「君にふさわしいのは、すべてを持ちうる王のような男だけだと――そう言っただろう?」 シルエットになった繊細な顎のラインがかすかに震えた。 「だから……だからって……!」 こんなカタチで 僕の前に戻ってくるなんて――。 「僕が天宮の人間になれば九条の家を守る事ができる。今以上の権力も財力も手にして君の前に立てる。そして何よりも――」 九条さんの腕が強引に僕を抱いた。 「永遠に君の側にいられる――」 しょせん認められない愛ならば どんな手をつかっても 側にいる事を選ぶと――彼は言う。 「そのためにお姉様を利用して……結婚までするの?」 「僕が天宮の人間になるにはそうするほかない。それに――」 九条さんは声のトーンをより一層落として呟いた。 「彼女は僕に利用されるほど馬鹿じゃない――」
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