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「それじゃあ……」
九条さんは僕から身体を離すとそっと頭を撫でた。
「こうなる事だってきっとすべてお見通しで――貴恵は僕の求婚に応じたんだろう」
「え……?」
「彼女の真意は分からないけどね。お互いの利害関係は一致したんだ」
「でも僕は……」
僕は九条さんから顔を背けた。
彼が偽装結婚まで決意して、僕の愛に答えようと苦悩している間――。
「……僕、征司お兄様と寝たよ」
何度も何度も。
それこそ九条さんの感覚を忘れるほどに――。
「だからもう、無理な事しなくていいよ」
当然。
高潔な彼は去る――そう思っていた。
だけど。
「だから言っただろう?僕を許してくれって――」
予想外の力で、僕は抱きしめられていた。
「九条さん……?」
「僕のせいだ」
「僕の言ってる意味分かってる?僕は君を裏切ったんだよ。君に愛されていないと思ったらすぐにさ――」
「言うな――」
唇を塞ぐ
悲しく激しいキス。
「君に愛されていないと思ったら僕は――」
腕の中にいても
涙があふれるほど苦しいなんて。
「泣かないで。僕も後悔してるんだ。一瞬でも君の手を放した事――君がどれだけ寂しがり屋で壊れやすいか知ってたはずなのに」
九条さんは首を下げると、そっとネックレスを外した。
「もう2度と手放さない――だから君もそうして」
そして僕の首に今一度愛の証を戻す。
「――何があっても」
僕はダイヤのクロスに口づけた。
本当に何があっても
僕らは
愛を守れるだろうか?
何があっても?
たとえ僕らが
家族になっても――?
第4章 【完】
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