episode 20 偏執する愛

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「それじゃあ……」 九条さんは僕から身体を離すとそっと頭を撫でた。 「こうなる事だってきっとすべてお見通しで――貴恵は僕の求婚に応じたんだろう」 「え……?」 「彼女の真意は分からないけどね。お互いの利害関係は一致したんだ」 「でも僕は……」 僕は九条さんから顔を背けた。 彼が偽装結婚まで決意して、僕の愛に答えようと苦悩している間――。 「……僕、征司お兄様と寝たよ」 何度も何度も。 それこそ九条さんの感覚を忘れるほどに――。 「だからもう、無理な事しなくていいよ」 当然。 高潔な彼は去る――そう思っていた。 だけど。 「だから言っただろう?僕を許してくれって――」 予想外の力で、僕は抱きしめられていた。 「九条さん……?」 「僕のせいだ」 「僕の言ってる意味分かってる?僕は君を裏切ったんだよ。君に愛されていないと思ったらすぐにさ――」 「言うな――」 唇を塞ぐ 悲しく激しいキス。 「君に愛されていないと思ったら僕は――」 腕の中にいても 涙があふれるほど苦しいなんて。 「泣かないで。僕も後悔してるんだ。一瞬でも君の手を放した事――君がどれだけ寂しがり屋で壊れやすいか知ってたはずなのに」 九条さんは首を下げると、そっとネックレスを外した。 「もう2度と手放さない――だから君もそうして」 そして僕の首に今一度愛の証を戻す。 「――何があっても」 僕はダイヤのクロスに口づけた。 本当に何があっても 僕らは 愛を守れるだろうか? 何があっても? たとえ僕らが 家族になっても――? 第4章 【完】
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