episode 21 ガーデンウエディング

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episode 21 ガーデンウエディング

良く晴れ渡った11月の日曜日――。 天宮家の屋敷の庭で 「本日はおめでとうございます」 それはそれは美しいガーデンウェディングが催されていた。 子供たちが吹くシャボン玉が風に舞う。 薔薇の花びらのみで作った芳香なフラワーシャワー。 そして――。 「貴恵お嬢様、グレース・ケリーみたいね」 クラッシックなオートクチュールドレスに身を包み、長い長いベールを引いて歩く貴恵の姿はまさしく本物の女王のようだった。 もちろん傍らに立つ花婿も――。 「あんなに美しい殿方、ご覧になった事があって?」 普段は貞淑なご婦人たちがみな垂涎するほどに美しかった。 「――それでは誓いのキスを」 ベールを優しく持ち上げる九条さんを見つめながら、僕はハリー・ウィンストンのネックレスを手の中で弄ぶ。 カサブランカのブーケ。 一流料理人のフレンチ。 ショパールのブライダルジュエリー。 すべてが洗練された本物で――。 新郎新婦のキス。 会場は大いなる拍手に包まれる。 僕ら兄弟も席を立ってにこやかに2人を祝福する。 そうすべて洗練された本物の中にあって ここにいる僕たち それだけが 偽物だった――。
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