episode 21 ガーデンウエディング

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「ひどいな。初対面で俺の事なんかよく知らないくせに」 拓海がごちる。 「分かるよ。君と一言でも交わせば。君は天真爛漫な野心家、合理的でリアリスト。僕の苦手な要素ばっかり持ってる」 「へえ。でもさ――」 反論することもなく、リアリストは悪戯に声を潜める。 「君の御眼鏡に適わなくても、美しい姉君はどうかな?」 「貴恵お姉様?」 「どう?――俺になびくと思う?」 九条家の新しい跡取りは 合理的なリアリスト その上、身の程知らずな自信家――。 「あのさ、気を悪くしないでね」 「もう、何を言われても驚かないよ」 拓海はシャンパングラスを持つ指先を翻し、話の先を促した。 「言っとくけど、君が貴恵お姉様を口説き落とせる可能性は、僕が君を口説き落とせる可能性よりずっと低い」 「ジーザス」 青い空をあおいで、拓海は本当に楽しげに笑った。 「俺はアメリカで『みんなの彼氏』って呼ばれてたんだぞ?」 「なあにそれ?」 「落とせない女の子はいないから」 たしかに九条さんの弟だけあって見てくれは抜群にいい。 IQも高くて、飛び級でハーバード。 フレンドリーでハッピーなのに、どこか肝の座った物怖じしない性格。 だけど――。 「――君は馬鹿だね」 この屋敷にいる限り 外のルールなんて 何一つ通用しないんだよ。
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