episode 21 ガーデンウエディング

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「性悪な女王様の相手は初めてでしょ?あの人はそこらへんの女の子とはまるで違うよ」 「ちょっと待てよ。性悪は君の方だろ?」 シャンパンに少し酔ったのか、陽気な拓海はますます饒舌になる。 「それ、事実だとしても聞き捨てならないね」 僕が前髪の間から一睨みすると。 だって――と拓海は僕の胸元に光るネックレスを指差し口を尖らせた。 「それ、俺が兄貴に頼まれてNYにあるハリー・ウィンストンの本店で取り寄せた特注品だぜ?本気にもほどがあるだろ」 「だね」 「だろ?だから性悪は君。あの人は愛のない結婚をしちゃった悲劇のヒロイン」 「なるほど」 僕はこれ見よがしに溜息をついた。 「君が思うより色々と複雑なんだ――でもこれだけは言っとくね。お姉様は全部分かってて結婚したの」 「どうして?」 「知るもんか。いつも何か企んでる」 口をぽかんと開けたまま 「――ますます近づきたい」 中学生の男の子みたいに拓海が呟いた。 「やめときなって。痛い目見るよ。九条グループもこれで安泰だってせっかくみんなが喜んでる矢先にさ――」 出会って初めて拓海の顔から笑顔が消えた。 「正直――兄貴の肩代わりなんてまっぴらごめんだ」 パーティーと女の子にしか興味がないかと思ったら。 「どうして?ゆくゆくは君が九条グループのトップだよ。財界の誰もが欲しがるポジションに、君はまたしても飛び級じゃない」 意外なところで垣間見えた 「そうだよ、俺だってずっと欲しかったさ――」 パーフェクトな兄との確執――。
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