episode 21 ガーデンウエディング

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グラスのシャンパンを飲み干すと僕はベンチから立ち上がった。 「行こう」 唐突に差し出された手をとって、訝しげに拓海も腰を上げる。 「行くって?」 「もしかしたら君にもチャンスがあるかも」 「え?一体どういうこと?」 はやる僕の後ろを追うように、拓海が歩を進める。 僕はそろそろパーティーの終盤を迎えた庭園に新郎新婦の姿を見つけた。 「花嫁を誘惑してみたら?」 貴恵はまだ九条敬を愛しているのか――? 女王がずっと曖昧にしていた質問の答えを、僕はようやく見つけた。 「貴恵お姉様が欲しいんでしょ?」 答えはNOだ。 女王は自分を裏切った男など決して許したりしない。 利用できるだけ利用して ばっさり首を切るつもりだ――。 「欲しいんでしょう?お兄様が手にしたものが――」 拓海の目が初めてのキスを待つ少年みたいにキラキラした。 「協力してあげる。誰も傷つかないし」 もし貴恵が本当に天宮の家を手中におさめようと企んでいるならば。 「むしろこういうお遊びは僕らの大好物」 いざという時の為に 弱みはひとつでも多く握っておいた方がいいからね――。 僕らはごく内密にかたい握手を交わした。 「ようこそ、天宮家へ――」 女の子に百戦錬磨だっていう九条家の次男が 舌なめずりして実兄の花嫁を狙ってるよ。 財界を揺るがす大スキャンダルにならなきゃいいけど――。
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