episode 24 オペレッタの夜②

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episode 24 オペレッタの夜②

天宮家一、洒落者の長男 胸ポケットから出てきたものは アルマーニのポケットチーフだけじゃなかったみたいだよ――。 細い巻きタバコをかざしたまま、刑事が小声で呟いた。 「署までご同行願えますか?」 ドラマでしか聞かないような陳腐な台詞に、征司が顔をしかめる。 「俺の物じゃない」 少なくとも今日のところは、本当に思い当たる節はないはずだ。 「知らない」 だってそいつを胸ポケットに忍ばせたのは、僕の隣で小さく震えている――九条家の次男この人だもの。 「何かの間違いじゃありませんの?」 九条の奥様のフォローも、この状況では一笑に伏されるだけだった。 「奥さん、私たちも魔法使いではありませんのでね。誰もはなから彼のポケットにこんなものがある事なんて知らなかった訳です」 「それじゃあ……」 刑事が呟く。 「タレこみですよ」 突然。 それまで直立不動のまま立ち尽くしていた征司が身を翻した。 「おまえかっ――?!」 あたりがざわめく。 狂犬と化した征司が、真後ろに立っていた上の弟に噛みついたのだ。 「まさか」 薫が呆気に取られているうちに。 弟の胸倉を掴んでいた征司は、両脇から若い刑事に取り押さえられた。
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