episode 24 オペレッタの夜②

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「一体どういうことだ……?」 そうして。 迷惑そうに襟元を正した薫もまた 両脇を捜査員に囲まれる形となった。 「こういう事です」 刑事は今度は薫のジャケットの内ポケットから――まるで手品のように同じ巻きタバコを取り出す。 「あなたも共犯だ――」 目の前で繰り広げられる舞台の続きのような出来事に、みな一同に目を丸くした。 「我々は魔法使いではないと言ったでしょう?天宮家のご子息が悪い薬に手を出しているというタレこみが――2件も続けて入りましてね」 「2件――?」 たまらず声をあげたのは拓海だった。 そう。 女王の気を惹く為、拓海が警察に征司のことを密告したのは――実は2度目のタレこみにあたる。 『薫お兄様、今あの薬持ってる?』 『吸うか?』 『やっぱりいいや。やめておく』 薫がジャケットの内ポケットから例の巻きタバコを取り出し、そこに仕舞い直すのを見届けた足で――。 僕は劇場に設置してある公衆電話へ向かったんだ。 僕が拓海に手渡し、拓海がそっと征司の胸ポケットに忍ばせたのは実は別の巻きタバコ。 それはもともと こんな事もあろうかと 僕が征司の部屋から拝借していた 計画的な証拠品。 だから2人は仲良く同じ違法ドラッグ持参でオペラ鑑賞に至ったわけで。 「なんて馬鹿な――!」 天宮家の当主も、息子たちのいまだかつてないスキャンダルにさすがに言葉を失った。 もしも次期当主を決める総選挙があったらさ これできっと、長男・次男そろって落選決定だよね。 そう思わない――?
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