episode 25 戯れの末路

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「あなた薫の事は、私や征司のように嫌いじゃないでしょう?」 「まるで僕が征司お兄様や貴恵お姉様を憎んでいるみたいな言い方」 「そんな事いいのよ。ごまかさないで。理由があるんでしょう?」 女王の追及から逃れたくて、僕は頭からブランケットを被った。 「言わないと、私の夫と今後一切夕べのようなことは許さないわよ」 何もかもお見通し。 僕は仕方なくブランケットの隙間から顔を覗かせる。 「そもそも薫お兄様が妙な薬で征司お兄様を失墜させようとしたの。その責任をとらせただけ」 貴恵は鋭い目をしたまま、納得しない。 「あんたと何年一緒にいると思うの?そんな正当な理由で、ものぐさなあんたが動くわけない」 「ひどい言われよう」 でも一理ある。 「答えは簡単。薫くんもあなたたちと同じ物が欲しかっただけだ」 いつの間にか――。 テーブルの向い側、白いシャツ着て爽やかに微笑む拓海の姿があった。 「この家の次期当主の座。そうだろ和樹?」 拓海の口から出た言葉にか。 はたまた別れて数時間で再び目の前に現れた男の心情にか――。 貴恵は複雑な表情で肩をすくめた。 「そう――それで薫まで。競争相手は少ない方がいいものね、和樹?」 女王は席を立ち、僕を見下ろして言い放った。 「でも、私と同じものが欲しいなら――あんたはやっぱり私の敵」 拓海の僕を見る目が、この瞬間氷のように冷たくなった。 女王の言葉は そのまま神託として 恋する男の頭にインプットされたみたいだ。
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