episode 25 戯れの末路

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しばらくすると――。 大麻不法所持で勾留されていた天宮家の長男と次男は莫大な保釈金と引き換えに保釈された。 しかし屋敷に戻ることは許されず、監視付で薬物依存症のリハビリ施設へと送られた。 皮肉な事だけど――2人一緒だから寂しくもないよね。 「最近、ベッドで果物を食べる君の姿をよく見るね」 僕は今朝も。 九条さんが寝泊りしているホテルのスイートルーム――もとい僕らの愛の隠れ家に忍び込んでいた。 丸かじりするオレンジの汁が、白いシーツに無遠慮にシミを作る。 「それも裸で」 シャワーから出たばかりの彼の体は、まだほのかに湯気が立ち込めて見える。 濡れた髪、パールを塗りこめたような白い肌にバスタオルをまとっただけの最高に魅惑的な姿で――。 九条さんは僕の隣に座った。 「怒らないの?」 僕は汚れた手をわざとシーツにこすりつけて笑った。 「こういう事されるの嫌いでしょ?」 「うん」 九条さんは僕の髪を優しく撫で、額にキスすると言った。 「君じゃなきゃ殺してる――」 兄弟の保釈と時を同じくして。 出来の悪い息子の尻拭いで疲労困憊した天宮家の当主は、再び体調を崩して大学病院に入院した。 今回ばかりは我が家の薬師である薫もいないので、純粋な病状の悪化――それにつきるだろう。 「オイシイの?」 九条さんが誘うような目をして、僕が手にしたオレンジに横からかじりつく。 「ずるいよ、そこが一番甘いんだ」 僕は果汁でベタつく手のまま、彼の首筋を強引に引き寄せた。 「もう一度シャワー浴びなきゃ」 九条さんはため息混じりに囁くと――僕の唇に、オレンジの果肉そのままの滴るようなキスを落とした。
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