episode 25 戯れの末路

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「一緒に行こうか?」 病院の車寄せにポルシェを止めて、九条さんはフランク・ミューラーの腕時計に目をやった。 「いいよ。時間ないんでしょう?」 「そうだね。君が悪戯ばかりするから――」 九条さんは目を細めて愛しげに僕の手を握った。 「それに、他人の僕が顔を出しても逆に煩わしいだろうしね」 「いや。血がつながってたって、僕と会う方がお体に触ると思うけど」 僕は笑って、九条さんの指先にそっと口づけると車を降りた。 「和樹――」 突然。 九条さんが窓から手を出して、名残惜しげにも一度僕の腕を捕らえた。 「なに?」 「君、いつからかそんな風に笑うようになったね」 僕は彼の言わんとするところが分からないまま、小首を傾げた。 「すごく優しい顔してさ――」 九条さんは少し切なげな憂いを含んだ瞳で、じっと僕の顔を見つめる。 「よしてよ、急に」 そんなこと言われた事ないから、どんな顔していいのか分からない。 「今夜また僕に会いに来てくれる?」 俯いたままの僕を覗き込むようにして、九条さんが確認する。 「もちろん。おあずけ食らったままだもの」 僕は人気がないのを確認してから、形の良い唇に軽く口づけた。 「必ず行くよ――」 そう、約束して――。
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