episode 25 戯れの末路

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青い顔した父は、息苦しそうに口をパクパクさせてどうにか呼吸していた。 「ナースを呼びましょうか?」 僕はナースコールのボタンを手にお伺いを立てる。 「出て……行けっ!」 父は僕のその手をはねつけると、息も切れ切れに叫んだ。 「いつも僕には風当たりが強いですね――お父様」 僕は気にせず、父の両肩をもむように手を置いた。 「みんなはあなたが、僕の事を特別嫌っていると思うでしょうね」 幼い頃は僕もそう思っていた。 だけどようやく気づいたんだ。 父が僕にだけ冷たく当たり、苛立ちをぶつける理由――。 「僕だけが唯一、あなたと血の繋がった親子なのに」 それは血縁があるからこその、稚拙な感情表現なんだと。 「僕だけのお父様――」 背後から含み笑いで囁く。 とたんに――父の呼吸が止まって、腕が苦しげに宙をかいた。 「あらら、過呼吸みたいだ」 僕はナースコールのボタンを押した。 吸い込んでも肺に入らない空気。 両手両足が操り人形みたいに引きつる。 「大丈夫、僕がついてます。でも――」 僕は父の背中をさすりながら、静かに自問した。 「それじゃ、あの屋敷で王や女王のように振舞っている双子は一体何者なんでしょうね?」 乱暴に扉が開かれ、ナースが病室に飛び込んできた。 「お父様、ごきげんよう」 僕は父の側を離れ、笑顔で病室を後にした。
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