episode 25 戯れの末路

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病人にはだいぶ刺激的な見舞いを終えた後――。 「おかえりなさいませ、和樹坊ちゃま」 僕はいったん屋敷に戻った。 「ただいま、中川。お父様、だいぶお疲れのようだった」 僕の部屋に封書を持ってきた中川は、複雑な表情で頷いた。 「これ、頼んでおいた例の?」 「はい。貴恵お嬢様と征司坊ちゃまのDNA鑑定書です」 「嘘でしょう――」 僕は中を見て思わず声を上げた。 中川は何かに勘づいている様子で、僕からさりげなく目をそらす。 「やっぱりこの家は魔の巣窟だったんだね――」 僕は封書をデスクの鍵のついた引き出しに奥深くしまいこんだ。 「中川、身支度を手伝って」 「はい。坊ちゃま」 僕は着ていた衣類を脱いで中川に投げ渡すと、鼻歌混じりにシャワールームへ向かった。 「これからは僕も――王様みたいな身なりをしようと思うんだ。どう思う?」 中川は答えなかった。 答えない代わりに、僕に向かって平伏すように深々と頭を下げた。 熱いシャワーを浴びる。 僕は今夜九条さんに、僕の素性を、貴族然としてこの家にのさばる兄と姉の正体を――すべて明かそうと思っていた。 その上で今後の僕たちのあり方を、考えていかなくちゃいけないって。 胸元でハリー・ウィンストンのダイヤがまぶしいほどに輝く。 だけど今、僕が感じているのは――。 今朝別れたばかりの恋人に また一秒でも早く抱きしめられたいという 甘く浅はかな欲望だけだった。
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