episode 25 戯れの末路

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「兄貴のところに行くの?」 暗闇に響く拓海の声は、いつもより低く落ち着いて聞こえた。 「そうだよ。君は――聞くまでもないか」 女王に会いに来たのだ。 「俺たちって懲りないね」 自嘲的な含み笑いで拓海が言った。 「ホテルまで裏の林を抜けて行くつもり?」 「うん。それが一番早いからね」 立ち去ろうとする僕の腕を拓海が掴んだ。 「暗闇は怖いだろ?明るいところへ出るまでつきあってやるよ」 掴まれた腕がひりひりと熱を帯びる。 「別にいいよ。僕って、見た目ほど軟弱じゃないんだ」 冗談めかして拓海の腕をほどく。 でも――。 「いいだろ?君に話したいこともあるし」 拓海は有無を言わせず僕の後をついてきた。 僕の口から、無意識にため息が洩れる。 僕らはしばらく無言で、夜露を含んでしっとりとした落ち葉を踏んで歩いた。 半歩後ろを歩く拓海の足音だけがやけに大きく聞こえる。 「風がいい香り」 今日の夜風は胸の奥をきゅっと切なくさせる、どこか懐かしい香を運んでくる。 このシチュエーションが 僕をどこか メランコリックな気分にさせていた。 「なあ、和樹――」 目の先に街の灯りが見えてきた頃。 半歩後ろを歩いていた拓海の足音が止まった。
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