episode 25 戯れの末路

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僕はそっと俯いた。 白いジャケットを――シャルベのオーダーシャツを貫通して、細いナイフが神の放った矢みたいに僕のハートに突き刺さっていた。 僕の左胸から、ちょうどポケットチーフのような形に赤い血痕が広がってゆく。 「ポケットチーフは……いらないって言ったのに」 ひとり皮肉な冗談に笑った。 だけど――あんなに血色のよかった僕の唇、きっと今は真っ青だろう。 地面に崩れ落ちながら すべては神の計画どおりなのかもしれないと――僕は思った。 「君がいなくなればいいって、そしたらすべてが思い通りに行くって――何度も、何度も、彼女が言うんだよ」 喘ぎ声にも似た拓海の泣き声が、頭の中にこだまする。 「そしたら俺が――叶えてやるしかないじゃないか!」 バカだな、君も。 君たちは兄弟そろって すべてを捧げる そんな神聖な愛し方しかできないのか? それもタチの悪い悪魔の使いのような 僕たち姉弟なんかのために。 僕の言葉はもう声にはならなかった。 最後の力を振り絞って、胸元のハリー・ウィンストンのクロスを掴む。 冷たい地面に横たわったまま――。 僕は愛しい人が僕を待っているであろう明るい方を見ていた。 やがて静かに闇が訪れる。 シャットダウン。 こんなところで死ぬもんか――。 ※【おまえの首に口づけしたよ1】 終 2へつづきます
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