episode 1 すべては戯れ

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「なんてことをしてくれた!」 父親という――名ばかりの得体の知れないもの。 僕の目の前で猛り狂う、憎しみの目をした初老の権力者。 「客人の前で恥をかかせおって!」 怒りに任せて投げつけられたスワロフスキーの置物が――。 粉々に砕けて僕の足元に散った。 「引き取ったのは間違いだった……。おまえは一体いつになったらこの家にも兄弟たちにも馴染むんだ!」 自分のあやまちに苦しんでいるのか、頭を抱えて。 「その目――香乃子にそっくりだ。おまえも私を恨んでいるのか?」 苦々しげにその名を口にする。 「母親と同じように――」 激しく肩を揺すられ、僕はされるがまま壁に打ちつけられ倒れた。 母の名を口にする時。 この男はもっとも弱者の顔になる。 「――っ!」 倒れた拍子に、割れたガラスの破片が僕の指先を切りつけた。 「ごめんなさい……お父様」 「出て行け!」 響く怒声――。 「もっとこの家に馴染めるように努力します……」 「顔も見たくない!」 指先に赤い血がにじむ。 それでも。 僕はここにいなくちゃいけないんだよ――。 僕はいそいそと立ち上がり、重厚な両開きの扉の前で父に一礼すると部屋を出た。
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