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子供の頃から身体が弱かったせいか。
僕は小枝みたいに痩せっぽっちで。
真っ白だった。
瞳と髪はみんなが驚くほど黒くて。
唇だけが朱を塗ったように異様に赤かった。
そんな僕を見て。
父は言った。
「軟弱この上ない――男子の風上にもおけんやつだ」
姉は言った。
「人形みたいな顔して何考えてるのか分からないわ。不気味な子」
上の兄は言った。
「あの目も唇も母親ゆずりだろ?誰かれ構わず誘惑するいやらしい娼婦みたいだ」
下の兄は言った。
「からっぽ。あいつの目は暗闇しか見てないみたいにいつもからっぽ」
そんな僕が15になった頃――。
まわりの僕を見る目が。
少しずつ変わってきた。
「天宮家のご三男をご覧になって?」
「あの美貌、あのまなざし」
「お妾さんの子ですって――」
「どおりであの色香」
僕の抱いてきた底はかとない背徳感。
真正面を向けない視線の癖。
痩せた白い身体も。
熟れたさくらんぼのように赤い唇も。
ただ、美しさと称されるようになった――。
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