episode 1 すべては戯れ

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気まずそうな学友をよそに。 「あら和樹、立ち聞きなんてお里が知れるわね」 僕を敵意たっぷりににらんだ貴恵が 「でもせっかく来たんだからなにかして私たちを楽しませなさいよ」 急に優しい声音で告げた。 これは今もつづく。 神託――。 僕は壁に立てかけてあったバイオリンを手にとると。 「では、お姉様のために――」 レクイエムを 奏でてやる。 無知な学友が僕に熱いまなざしを送る中。 「やめて!辛気臭い。あんたって本当に疫病神ね」 貴恵は迷惑そうに手を打った。 「才能もないくせに音楽なんて生意気――そうね、いらっしゃい」 「はい」 貴恵は僕を呼びつけると。 自分の胸元に結んでいた黒いリボンをほどいた。 「膝をついて後ろを向いて」 「貴恵さん……?」 目を丸くする友人たちには一瞥もくれず。 「あんたにぴったりの余興を思いついたわ――」 悪戯に微笑んで。 足元に跪いた僕の両手を。 自分のリボンで後ろ手に縛りあげた――。
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