episode 1 すべては戯れ

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部屋に戻る廊下の先で――。 「ずいぶんな格好だな」 貴恵から開放された僕を見つけたのは 「征司お兄様……」 悪魔の双生児の片割れだった――。 切れ長の瞳が僕を捕らえて妖しく光る。 「大事な来客があるんだ。そんな格好でうろうろされちゃ困る」 首筋にかかる長い髪は見事にセットされ、一縷の乱れもない。 トラッドなファッションは良家の御曹司そのものだ。 「すみません。すぐに着替えてきます――」 先刻の屈辱にまみれたシャツの前をかき合わせ、僕は目を伏せた。 「和樹――」 横をすり抜けようとする僕の手首を、征司はがっちりと掴んだ。 『やっぱり縛られて感じたか?』 頭ひとつ高いところから、いやらしい囁き声が聞こえてくる。 僕の背中にゾクリと電流に似た震えが走った。 「見てたんですか……」 顔を背ける僕を壁に押しつけるようにして 「他の奴に2度とあんな顔見せるな」 征司は低くうなった。 「今夜、俺の部屋に来いよ」 「――はい、お兄様」 僕の頭を乱暴に小突くと、完璧な御曹司の顔に戻って、征司は去って行った。
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