壱※止まる刻・動き出す鼓動

3/12
前へ
/224ページ
次へ
その日私は友人の祐希(ゆうき)と一緒に下校していた。 時間は今でも胸に焼き付いている。 午後5時42分。 冬の夕焼けがまどろみはじめ、寒いながらも心地よく風が吹いていた。 だから私も祐希も辺りが暗くなったとき、ただ夕陽が雲に隠れたんだ。 そうとしか、意識していなかった。 「ギャーーー!!! ……… …………」 私の普通、日常を引き裂いたのは、誰かの絶叫する声。 それは狂気と傷みを撒き散らすには十分過ぎた。 「なんか、ヤバいよ!! ユキ!走るよ!」 私は訳も分からぬまま、祐希に腕を掴まれ走りだしていた。
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加