壱※止まる刻・動き出す鼓動

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恐怖に呑まれそうになり、狂気を肌で感じながら走り続ける。 そんななかで走り続けられるほど私は強くなかった。 1分も立たないうちに、地面にへたりこんでしまう。 この時の冷たいコンクリートの感触を嫌という程憶えてる。 それ以上に、この時背中に感じた死の音も。 振り返った私たちが見たものは、 文字通り、“化物”だった。 それは一つの形で留まっていなかった。 犬の様になったと思ったら、鳥の様になり、、次には…… 「お、お父さん……?」 祐希の父の姿をしていた。 スーツを身にまとい、温厚そうな優しい顔。 髪は祐希に切り揃えて貰ったばかりなのか、爽やかなショートヘヤー。 だけど、そこに“色彩”がない。 墨絵のようなモノクロ。 それが一層私達の価値観をズタズタに引き裂く。
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