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恐怖に呑まれそうになり、狂気を肌で感じながら走り続ける。
そんななかで走り続けられるほど私は強くなかった。
1分も立たないうちに、地面にへたりこんでしまう。
この時の冷たいコンクリートの感触を嫌という程憶えてる。
それ以上に、この時背中に感じた死の音も。
振り返った私たちが見たものは、
文字通り、“化物”だった。
それは一つの形で留まっていなかった。
犬の様になったと思ったら、鳥の様になり、、次には……
「お、お父さん……?」
祐希の父の姿をしていた。
スーツを身にまとい、温厚そうな優しい顔。
髪は祐希に切り揃えて貰ったばかりなのか、爽やかなショートヘヤー。
だけど、そこに“色彩”がない。
墨絵のようなモノクロ。
それが一層私達の価値観をズタズタに引き裂く。
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