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「祐希……、向かえに来たよ。」
それなのに、声はあの優しい祐希の父。
分からない、ただ分からなかった。
自分が今どうなってしまっているのか、
そして、
祐希がなんであんな事をしたのか……
「お、お父、さん……」
祐希はまるで蛍光灯に寄っていく虫のように、ふらふらと父の下へ歩きだしていた。
私は本能的に祐希の腕を掴んでいた。
「祐希!いっちゃダメ!
あれは祐希のお父さんじゃない!」
それでも、祐希の目は虚ろで、生気は抜け落ちていた。
「何言ってるの、ユキ?
お父さんじゃない? 」
「ほら、祐希……、おいで。」
父の呼び掛けに呼応するかの様に、祐希は私の手を振りほどき走って行く。
この時私は、祐希を止める事の出来なかった自分の非力さに打ち拉がれるしかなかった。
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