夢の男

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  それは塾の帰り道だった。 算数と国語以外がてんで話にならないと言われ、放り込まれたのがそこだった。 学校帰りにコンビニで買ったパンとコーヒー牛乳でカロリー補給。 疲れた頭に更にムチ打った帰り道を、一人とぼとぼと歩いていた。 もう暗くなった街に降る雨が車のライトを滲ませて切ない美しさで彩っている。 透明のビニール傘を肩に乗せて歩くその隣を、車が通り過ぎて行った。 今朝の夢を思い出す。 夢の中でもこんな雨の夜だったんだ…… 掴み所のないミステリアスな夢。 雨の中で黒いコートの男が後ろからついて来る。 その男は紳士なハットで目元が隠れているのに ヘビのようなしたたかさで、ゆっくりとついて来る。 振り返ると真っ赤な唇は不適に釣り上がり、まるでドラキュラみたいにコートの裾を揺らしていた。 ぶるっと身震いする。 雨のせいで余計な事を思い出してしまった。
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